ファミマのこども食堂と喫煙問題

ファミマ子ども食堂への懸念

こんな記事があったのでツイッターで取り上げました。

引用します。

ファミマ子ども食堂への3つの懸念と意見より

コンビニエンスストア、小売業の産業自体が貧困やワーキングプアを再生産していることは執拗に指摘しておかなければならない
指摘しなければ彼女たちに申し訳が立たない。小売業、飲食業にはシングルマザーが多く、低賃金で子どもを育てている
子どもの貧困を生み出しているのは誰なのか。もう一度「子ども食堂」を名乗る前に考えていただきたい。

「企業が善意で取り組むことならば何でもやるべきだ。やらない善よりやる偽善。」など様々な声が聞かれるが、まずやるべきことはなんだろうか。僕は子どもに商品提供や企業体験をさせることではないはずだと繰り返し指摘しておく。

さらに、コンビニエンスストアのオーナーは最低賃金を割り込む賃金で働くこともあるし、アルバイトも最低賃金周辺の賃金で働いている。
そのなかには前述したように、子育て世帯の従業員も含まれている。子ども支援に取り組むのであれば、まず自社関連の従業員の処遇改善を業界全体で引き上げていくことこそ、優先すべきであろう。

ワーキングプアを構造的に発生させながら、子ども支援に取り組む姿は、火をつけながら消火活動をするような印象をどうしても持たざるを得ない。
少なくとも小売業からワーキングプアを減らす取り組みや宣言が見られるだけでも印象は違ったはずだ。

最初は別にいいじゃんって思った

この記事を読んで、第一印象は「別にいいじゃん」だった。

記事中にもあるように「やらない善よりやる偽善」だと僕も思うし、それによって理念から外れていたとしても救われる子どもが現場にいるならそれで良いと思った。

この記事の筆者が考える子ども食堂は子どもやその親、及び地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や暖かな団欒を提供するための社会活動だ。

一方、ファミリーマートが提供する子ども食堂の食事にはおそらく自社の商品が用いられるだろうし、理念実現の一貫である食事以外の社会活動的な部分は実践されないだろう。参加者には体験イベントが実施されるという内容が含まれるあたり、社会貢献活動というよりは自社の地域への宣伝活動という印象が強い。

だが、日本は欧米に比べ寄付の文化が希薄だ。
だから福祉的な社会活動の活動主体は恒常的な資金難に晒されているし、その絶対数はなかなか増えず、社会のニーズに応えきれていないというのが現状だ。

理念は大事だ。
でも、理念を追求し過ぎて目の前で溢れるニーズを掬いきれないのなら、理念に拘らずに目の前で空腹に晒されている子どもに食事を提供するのは悪いことじゃないんじゃないかと、最初は思った。

この問題が喫煙問題と似ていることに気づいた

最初、この記事に「別にいいじゃん」的なコメントをつけて引用ツイートをしたのだけれど、投稿して数分で投稿を削除した。

その時は相変わらず別にいいじゃんと思っていたのだけれど、でも、なんか違和感があった。
この話の流れ、どこかで聞いたことがある。と。

引っ込めて数日塩漬けにしておいたら、ある日、喫煙問題について考える機会が得られた。

そこで見た構造的な問題が、正にファミマが提供する子ども食堂の問題と同じだった。

記事の筆者はコンビニ業界こそがワーキング・プアを作り出す業界であるのだから、理念も持たずに子ども食堂をやるくらいだったら、その予算を末端の従業員の賃金に充てるべきと主張している。

これのどこが喫煙問題と一緒なのかと言うと、喫煙問題はこのような状態になっている。

たばこの販売は財務省管轄だ。
たばこの売り上げにより国は毎年2兆円の税収がある。
たばこが健康に悪いことはたくさんの科学的証拠があり、誰もが知っている事実であるし、最近では副流煙などの間接煙暴露でも肺がんのリスクが上昇することがわかっている。

たばこが有害なことは明らかであるし、国とてそれを知らないはずがない。
だが、国はたばこを禁止することによる税収低下であったり、国が保護してきたたばこ産業に従事する人の雇用問題などを盾にして、禁止するという策は打ってこない。税収が下がらない程度に増税し値上げさせているだけだ。
それを証拠にたばこ税の税収は値上げを続ける最近でもずっと2兆円台だ。

このように、根本的な問題である喫煙者に対してはある程度放置しておきながら、受動喫煙防止法などによる非喫煙者への対応を昨年度は予算55億円もかけて実施している。

増税しながら喫煙者を減らす努力をしているじゃないか、と言われるかもしれないが、値上げは生ぬるい。
1959年当時ピース10本40円だった。今は10本だと250円だ。
1959年の大卒の初任給は10,200円。今は20万円程度。給与水準は20倍になっているのだからせめて800円くらいが妥当だ。

コンビニが自身のクルーへのコストを切り詰めながら社会貢献活動っぽい宣伝活動をすることと、国が喫煙者に対する禁煙へのアプローチをないがしろにしながら受動喫煙に対して手厚く取り組む姿が、僕には重なって見えた。

どちらも枝葉末節のみを見ているように思える。
そして、その枝葉末節にはそれはそれは綺麗な花が咲いていて、木そのものを見せるよりも素人の僕たちには価値があるように思わせることができる。
それを見せる側が知りながら、その枝だけを見せているのだとしたら。。。

ファミマは子ども食堂をやればいいと思うが、、、

結論から言うと、僕は引き続きファミマは子ども食堂をやれば良いと思っている。
コンビニは地域のインフラとしてはなくてはならないものになっている。その規模でやれば理念はともかく、これまで救えなかった誰かを救うことができるだろう。

だけど、僕はこの筆者の言いたいこともわかる。

ファミマはここで誰かを救ったとしても、それは自分が撒いた種なのかもしれない。
それを理解した上で、そこに子供達を追い込まないように貧困対策に打って出なければ、放火犯が自分の放った火を消しとめて、火事を防いだと自慢げに吹聴しているみたいな構図になってしまう。

もちろん貧困問題はファミマだけのせいではない。労働者を安価な条件で労働させながら安さや過剰なサービスを提供してきた現代の日本の小売業全体に責任があるし、それを享受してきた僕ら自身にも責任の一旦があるのかもしれない。

だが、ファミマはそんな小売業の中で初めて子ども食堂をやると宣言した。それはつまり貧困問題に関わろうとしているということだろう。
ただの宣伝活動だなどとは言わせない。
利益を度外視して子どもに原価に近い安価で弁当を食べさせるのだから、宣伝活動の一環だとしても、その宣伝する対象はやはり低所得者層だろう。ただの宣伝活動ならマクドナルドのマックアドベンチャーのように実際のセットの料金に体験分のコストを上乗せすれば良い。

貧困問題に関わるのであれば、それは自分が当事者であることを認めるべきだ。そして片方で子ども食堂を運営し目の前にいる貧困にあえぐ人に手を差し伸べながら、もう片方では抜本的な構造改革を行い、ワーキング・プア対策を行うべきだ。
この二つは車の両輪であるべきで、短期的に子ども食堂が目の前の貧困を救済しながら、長期的には労働者の待遇が改善されるのが望ましい。

非喫煙者は救済されるが喫煙者はどうなるのか

喫煙問題も、2020年4月に努力義務だった受動喫煙防止が義務化される。
これにより望まない受動喫煙は減ると思われる。
だが、喫煙者の救済はどうするのか。

「たばこは嗜好品、喫煙者は好きで吸っているのだから放っておけば良い」

という意見には賛同できない。
たばこはニコチン依存症を生じさせるものだからだ。
ニコチンの依存性はアルコールや覚せい剤(アンフェタミン)より強い。
だから、たばこを吸っている人は嗜好で吸っているのではなく、ニコチン依存症のためたばこを病的に吸わされてしまっていると考える方が自然だ。
たばこをやめられないのは病気なのだ。

もしも国が本気で喫煙対策に臨んでいくとすれば、片方で受動喫煙対策を行いたばこを吸わない人の健康を担保しつつ、もう片方では喫煙者つまりニコチン依存症患者が禁煙できるような施策に打って出るべきだ。

税収減を気にしながら微妙に増税していくだけでは、喫煙者はなかなか減らない。
その間にも国民の健康は損なわれていく。

でも、多分国はそれを知りながら、そういった施策を打たない、あるいは打てないのだろうから、この問題に関しては僕は若干絶望している。

せめて、民間企業であるファミリーマートさんは、自分の立場を理解していただいて、自分たちが直面する問題に正面から当たってくれるように望むばかりだ。