それは大変でしたねえ・・・
医学部での試験にOSCEというものがあります。
いわゆる医療面接の模擬テストみたいなもので、上手に患者さんとコミュニケーションがとれて、患者さんから病気の情報が収集できるかといったものを、模擬患者さんを用いてテストします。
患者さんとのコミュニケーションに正解があるはずがないのですが、OSCEはテストのため正解のある採点形式でした。少なくとも僕が学生のころは。
そうすると、変なことがおこります。
模範解答みたいなものがあって、それを忠実に守れば良い点が取れるのです。
たとえば、
「それは大変でしたねえ」
と言えば、患者さんに対して共感的な態度であると判断し1点。気持ちがこもっていれば2点。もちろん、面接中にその言葉がなければ0点です。
なので、全ての医学生が模擬面接ではどこかのタイミングで「それは大変でしたねえ」と言うのです。
こういうのを積み重ねて100点を目指します。
アホらしい。
決められた台詞を台本を読むように言ったって実地で役に立つはずがない。
と正直学生時代は思っていました。
ですが、実際仕事で患者さんと向き合うようになって、OSCEの決め事がちょくちょく脳裏をかすめます。
刷り込みみたいなもので、「それは大変でしたねえ」などと言うことはほとんどありませんが、「それは大変でしたねえ」的なことが自然と言えるようになっていました。
患者さんに共感してあげるというのは基本的なことで、やって然るべきというのはすべての医学生が知っていることですが、実際どのようにすれば共感的態度になるのかというのはなかなか難しいものです。
OSCEはその雛形を呈示してくれていたのかもしれません。
今日、娘のおままごとにつきあっていたら、医者役の娘が、患者役の僕に
「それは大変ですねえ」
と言ったので、
OSCEかよって思いだしたので、これを書きました。
共感的態度がとれていたので1点、ニヤニヤしながらなので加点はなしです。
ちなみに僕はOSCEの試験では共感的態度は2点とりましたが、面接中ずっとペンを回していたらしく(クセで無意識でした)、減点されました。それ以来ペン回しはやめました。
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