週刊現代2018年12月1日号を読みました
今週患者さんから
「先生が処方しているアムロジピンっていう薬、週刊現代に飲んじゃダメって書いてあるんだけど」
などという問い合わせが複数寄せられました。
週刊誌の記事はいつもひどいので、ああまたかと思いながらも、今回は興味本位で週刊現代の記事を読んで見ました。
久々にひどい記事を読みました。
厳密に言えば、記事はそうでもありませんでした。
見出しがひどいです。
週刊現代はこれを故意にやっているなら売上のためには読者の健康を犠牲にしても良いと考える医療の敵です。
気づかずにやっているなら、文章を読めない阿呆でしょう。
その理由を書いていきます。
まずは週刊現代の記事のもとになった厚生労働省の指針を読んでいただきたいです。
医療関係者は是非全部読んでほしいと思います。
僕も初めて読みましたが、とてもわかりやすい良い内容です。
医療者でない方ははじめにだけでも読んでほしいです。
概略はこんな感じです。
この指針は高齢者になると若い人とは異なり、有害事象が起こりやすかったり、認知症などの関係でちゃんと薬を飲めなかったりするから、それを注意喚起して高齢者により良い服薬環境を提供するために作った、「医師、歯科医師、薬剤師に向けた」指針です。
高齢者の有害事象の増加の原因は歳を重ねることによる変化と、薬を多剤内服することの2点が大きく、多剤内服のうち害のあるものをポリファーマシーと言います。
何種類以上がポリファーマシーかという定義はなく、患者さんの病態次第です。
なので患者さんに併せた安全確保のための適正な処方をお願いします。
ポリファーマシーの改善のための減薬手順は確率されていません。機械的に減らすことは病気を悪化させることもあるため注意が必要です。減薬をする時には注意深く観察してください。
高齢者の薬物有害事象はふらつき、転倒、食欲低下、便秘など高齢者に良くある症状(老年症候群)として出現することも多く、見過ごされがちなので注意しましょう。薬剤との関連が疑わしい症状があれば、処方をチェックし、思い当たる薬剤の中止や減薬を考慮しましょう。高齢者に何か症状が出現した場合は薬剤の有害事象をまず疑いましょう。
こんな文章の最後に別表として週刊現代に掲載された薬剤のリストの元の表が載っています。
表のタイトルは「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」。
つまり厚生労働省の言いたいことはこうです。
・高齢者ではポリファーマシーが問題になっている。
・医師、歯科医師、薬剤師は高齢者のポリファーマシーを念頭におき診療、指導にあたりましょう。
・ポリファーマシーをなくすため医師、歯科医師、薬剤師が薬を患者さんに提供する際には十分注意しながら、必要のない薬を減らしていきましょう。
・高齢者がよく使っている薬のリストを添付します。それぞれの薬にはこんな有害事象があるから覚えておいて活用してね(別表)。
厚生労働省の言い分に異を唱える医療関係者は多分いないでしょう。
僕も大賛成です。
実際実践もしています。
週刊現代のこの記事の文責者がこの指針を全部読んで、最後のこの別表を見て、雑誌表紙の大見出しに使ったように「この薬は飲み続けないほうがいい」と書いてあると読み取ったとしたら、中学校くらいから国語をやり直したほうがいいと思います。
国は高齢者の多剤服用によるポリファーマシーが問題で、それを解決するための指針を示しているのであって、危険な薬をリスト化して公表した訳ではありません。
リスト化された薬は高齢者に頻用されている薬で、頻用されているからこそリストに載せ、このような有害事象があるから注意しましょうね、と注意喚起しているだけです。これらの薬が載っていない薬に比べ危険度が高いから載せたとは1ミリも書いていません。
にもかかわらず、週刊現代の記事ではこのリストを「高齢者が注意すべき薬」と銘打って載せています。
もう一度言いますが、指針を読んでこう読解したと言うなら、記者としての資質はありません。中学校から国語をやり直してほしい。
もしも読解できた上で、高齢者が頻用している薬を単剤で内服しても危険かもしれないとミスリードされるような、こんな見出しを書いたとしたら、この記者とこの記事を取り上げた週刊現代は現代医療の敵です。
この指針は医師、歯科医師、薬剤師向けに制作されています。
一般の方が読むと難しいでしょう。
それをわかりやすく一般の方に開示するという方向性でこの記事を制作したならすごく好感が持てる内容になるはずなのに、センセーショナルな記事にしたいがために、患者さんが誤解するような表現をあえて使って購読者を増やそうとしているように見えてなりません。
僕はあまり怒らない性格なのですが、今日は久しぶりに頭にきました。
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