コンビニ受診について

2019年1月8日

今日は休日救急診療所の小児科当番です。

すごく空いているので、休日診療などで思うことをちょっと書いてみます。

日曜や夜間に軽症で来院されることをコンビニ受診とよく言います。日曜や夜間に当番をしている医者はあくまで翌日まで待てない、待つと命に関わるような急患の対応のためにいるのであって、風邪などの軽症患者さんをいつでも診てあげるというコンセプトでいるわけではない、ここはコンビニではないのだ、ということからこう言われます。

そして、そんな所謂コンビニのようにちょっとした風邪で夜間に来院される患者さんに対して、「こんなことで受診するな」と怒る先生もいるのです。
おそらく先生としては啓蒙と教育のため、正義のためと思っているのだと思うのですが、僕は少し違った意見を持っています。

これは医者の中でも異論がすごくあると思うけれど、結論から言うと、

・コンビニ受診は仕方ない。
・医療現場は受診行動の教育の場ではないので、受診行動に対して怒るべきではない。

という意見です。

・コンビニ受診は仕方ない

まず、患者さんは病気に対する知識が当然医者に比べて少ないです。あたりまえです。
そんな患者さんに病気の軽重を的確に判断しろというのは無理な話で、体の状態が普段と異なれば、当然明日まで待って大丈夫か、と不安になるはずです。
医者は知識があるので、自分が体調不良になっても、その症状を的確に分析して、今対処すべきか明日まで休むかなどといったアセスメントを自然にやっています。だから、患者さんが不安になる気持ちがわかりにくいのかもしれません。

軽症でも症状に対する不安が勝ってしまって、明日まで待てなくなってしまった場合、患者さんは救急外来を受診します。
結果、そこで軽症と判断されて患者さんは安心して自宅で様子をみれるのです。

軽症なのに受診してきたから怒るというのは後出しジャンケンみたいなもので、結果としてそうだっただけにすぎません。
患者さんにとっては休みの日や夜に敢えて医療機関に行かなければならないだけの蓋然性が自分の中ではあり、コストや手間、時間をかけて受診しているのです。
一次救急というのは、そんな患者さんの症状を診て軽重を判断し、必要があれば二次救急に橋渡しするのが仕事です。
軽症の患者さんをご自宅に帰し翌日のかかりつけ医に誘導するのも仕事のうちなのです。

それをその患者さんと初対面の医者が背景や心情などを顧みずに「なんでこんなことで受診したのだ」と叱るというのは、間違いではないかと思うのです。

・医療現場は受診行動の教育の場ではないので、受診行動に対して怒るべきではない

そしてもう一つは、医療機関や医者がそこで与えられている役割です。
医者には患者啓蒙や教育という役割も確かにあります。
ただ、それは救急外来などの切羽詰まった場所で行われるものではないと考えます。

コンビニ受診は確かに問題も多いです。
それが医療資源を疲弊させている事実はあると思います。
ただ、それを正すのは患者さんが病んでいる時であってはならないとも思います。

患者さんが軽症だったとしても、そこで受診行動について怒られたら、それはすごいストレスで、それだけで体調を悪化させかねません。
私達医療者には来院した患者さんに最良の医療を提供する責務があり、病気の中身と関係のない「ここに来た妥当性」についてその場で議論することは、その最良の医療を提供することには決してプラスに働きません。

日本の医療はフリーアクセスです。
これも議論の余地がありますが、その権利が与えられている患者さんがその権利の範囲内で行動しているのに、それに対して医療側の明文化されていない正義を、まさに病んでいるその場でぶつけるのはどうかなと思うのです。

コンビニ受診は、患者さんになるかもしれない人が元気な時に啓蒙や正確な情報提供によって抑制されるべきです。
患者さんがちょっと体調を崩して、不安にかられ救急外来をコンビニ受診してしまった時点でそれには失敗してしまっており、患者さんは無駄なコストや手間、時間をかけられてしまっています。

患者さんがそんな無駄を払わないために、僕たちは日頃の外来で#7119や#8000の啓蒙だったり、救急外来にかかるタイミングの教育だったりを行うべきだろうと思います。
そしてそれでも軽症の患者さんが救急外来に来てしまったら、大丈夫だよと安心させて、いずれその患者さんにも啓蒙や教育が施されるのを期待しながら優しく帰してあげるのが良いでしょう。