本当のことを言わないということ

2019年1月8日

久しぶりに娘の話。

妻は綺麗好きで、よく掃除をします。

断捨離も得意で、自分のものも効率良く処分していて、無駄なく生活する姿は見習うべきと日頃思っています。

そんな妻なので、娘達のものもよく整理しています。

自分のものとは違い、妻は娘達のものはあまり捨てたりしないのですが、逆に娘達は誰に似たのかなんでも取っておいてしまう傾向があり、放っておくと創作した折り紙とか塗り絵とかで、僕の机が占拠されてしまいます。

今日、妻が思い切ってそういった創作物などのうち、出来栄えの良い代表選手のみ保存して、それ以外を断捨離しました。

その中に、遥か昔、どこかのショッピングモールで長女が見知らぬおじさんにもらったアンパンマンのイラストの書いてあるカードがありました。

イラストはおじさんの自作らしく、青いマジックで描いてあり、まあ落書きとしては上手な部類のイラストでした。

夜になり、明日は燃えるゴミの日だったので、ゴミをまとめていたところ、次女がゴミ袋に透けるそのアンパンマンのカードを見つけてしまいました。

次女は黙ってゴミ袋を開け、アンパンマンのカードを取り出し、

「捨てないよ。これは取っておくの」

と言いました。

僕は自分があまり捨てられない性格なので、それでも捨てろとは言えず、また、2歳にしてゴミ袋にカードが入っている意味とか、それを救出すれば捨てられないで済むという判断とか、取っておくという適切な言葉選びに、親バカながら感心して、

「いいよ、とっておきな。机に置いておこうね」

と伝えました。

次女は言われた通りの場所にカードを置き、それでミッションは成功したと満足したのか、そのまま他の遊びを始めました。

僕はゴミを出しに行って、帰ってきて、すっかりカードの事は忘れてしまっていました。

娘達が眠ってから、妻が、

「今日、あのアンパンマンのカード捨てたんだけど、長女に見つかって拾われちゃった」

と話してきました。

あれ?おかしいな。

拾ったのは次女なのに、妻は長女だと思っているようでした。

「それ拾ったのは次女だよ。僕の前で拾ってたもん」

と伝えると、妻は自分の中で抱いていた違和感の理由に気づいたようでした。

「そうか、そうなのね。私長女に問い詰めちゃったよ」

どうやら、拾われたカードを見て、妻は長女がゴミ袋から拾ってきたと思ったようです。

そこで長女に、

「このカードゴミ袋から拾ったでしょ」

と聞いたところ、

「え?あ、うーん、、、」

とお茶を濁すような回答だったため、

「ゴミ袋を漁らないでね、このカードそんなに大切なの?」

と聞き直すと、

「でも可愛いから取っておこうよ」

と言ったのだそうです。

そのため妻は長女が拾ったものと思ったようでした。

長女は普段はわりとはっきりものを言う子なので、この歯切れの悪さに妻は違和感を覚えたようでした。

自分で拾ったなら、

「だって可愛いから。取っておきたい」

くらいの主張はするでしょう。

逆に拾ってないなら

「拾ってないよ、次女じゃない?」くらいは言うと思います。

それがこの歯切れの悪さ。

おそらく長女としては「違う、拾ったのは私じゃない」と言おうとして、でもここで否定するとこのカードが捨てられてしまうかもしれない、という葛藤の中から咄嗟に判断しあの歯切れの悪い回答をしたのではないかと思うのです。

そして、ゴミ袋漁らないでねという提案に対して、

「でも可愛いから取っておこうよ」という回答。

この回答は一見妻の提案には全く答えていないように見えますが、この中には、

・私は拾っていない。
・でも捨てないことには賛成。
・捨てられないためにはここで拾ったという罪くらい被ってもいい。

という必死のメッセージが見て取れます。

長女は嘘はつきたくなかった。

でも本当のことを言うと捨てられてしまうかもしれないので、嘘はつかず、本当のことも言わなかったのだと思います。

長女は6歳。

来年は小学生です。

まだまだ幼児だと思っていましたが、思考を直接言葉にしないで対応するという大人の対応を目の当たりにして、日々成長してきているのだと感心しました。

親バカです。

余談ですが、妻は今回の顛末を把握し、明日長女に謝ると言っていました。

妻が子供達を自分と対等にひとりの人間として扱っているところもまた尊敬しています。

長女も次女も妻のように真っ直ぐで優しくて整理整頓のしっかりできる、そんな女性に将来なってくれれば良いなと思っています。