クレーム対応

2019年1月8日

医院で診療活動を行なっていると、様々なご意見を頂戴します。
その中には苦情や改善要求、所謂クレームと言われるものも沢山あり、理不尽な要求もたまにあります。

ネットを見ていると、患者さんからの理不尽なクレームを受けた時、不当に非難されたと怒りを感じておられる医療従事者も多いようです。

私自身はあまり怒りを感じない性格なのか、そういう理不尽なクレームをいただいてもイライラしたりはしません。少し落ち込んだりします。ですが、落ち込んでばかりもいられませんので、なんとか前向きに転換してやろうと考えています。なので私にとってクレーム対応は学びの場だと思っています。

ネットでこんな話がありました。
「受付が笑顔じゃない」というクレームと「受付が笑っていた」というクレームをもらった、と。
片や笑えと言い、片や笑うなと言う、相反する二つのクレーム。投稿された方は病院の接遇には完全な答えはない。とまとめておられました。

私も完全な答えはないと思います。
ただ、この投稿のクレームには完全ではないけれど、よりベターな対応があるように思われます。

医療機関の受付には笑顔が必要だと個人的には思います。しかしその笑顔が誰に向けられるかで患者さんの感じ方は大きく異なってきます。

スタッフの笑顔が患者さん本人に向けられ、それによって患者さんが癒されればそれは良いこととされ、一方スタッフ同士が笑いながら話していると「ヘラヘラしやがって」となるのです。

スタッフ内のコミュニケーションだって笑顔の方が良いに決まっているのですが、それが気になる人もいるのです。

混雑していて長時間会計を待つ中、スタッフが笑顔で会話している。でも会話の内容まではわからない。そうすると、ひょっとして仕事と関係のない話をして、仕事が手についていないのではないか。そう思われてしまう可能性は当然あります。
本当は患者さんの取り違えを予防するためのスタッフ間の声かけだったりするのですが、実際どうだったのかという事よりも、患者さんがどう感じるかの方がはるかに大切なのです。

そこで、それを踏まえて今回の事例の対策としては、受付と患者さんの間のコミュニケーションでは笑顔を用いて臨み、スタッフ間のコミュニケーションは患者さんの見えないところで極力やりましょう。
となるかと思います。 

医療機関の役割は病に悩む患者さんを快方に向かわせることです。
そのためにスタッフの力を結集する方が良いに決まっています。
僕は、治療は医者の面前で完結するのではなく、医療機関に入った時から始まり、出るまで終わらないと考えています。
そして、当院のスタッフにはその意識を共有してもらっているつもりです。
そのような意識をスタッフにも共有してもらうことでプラセボの力が引き出せると考えるからです。
逆に、患者さんが医院を出るまでにスタッフの対応にイライラしてしまったら、医者がどんなに適切な治療をしたって良い治療結果が得られにくくなると思うのです。

クレームを頂いた時、患者さんがなぜこう言うのかを患者さんの立場に立って考えてみる。そうする事で変えるべきもの、守るべきものが見えてきます。 今回の事例ではスタッフが自然とやってくれている患者さんへの笑顔は患者さんの治癒力を引き出す大きな力です。
そしてスタッフ間の良好なコミュニケーションも患者さんのためになくてはならないものだと思います。
それでもそれらが嫌という患者さんがいるなら、嫌と思われない環境を用意することも必要だと思うのです。

相反するクレームが届いたとしても、その状況を分析すればそのどちらにも自分達が患者さんたちにより寄り添えるためのヒントがあり、それを拾い集めてより良い医療を提供する場に育てていくことが医院経営者たる自分の責務だと思っています。

内科では患者さんの身体を治すのは最終的には患者さん自身です。だからこそ、その力を削がないようにできる限り寄り添いたいとおもっています。