心肺停止

2019年1月6日

今日、患者さんが診察中に心肺停止に陥るという、非常に稀なケースに遭遇しました。

気分が悪いという患者さんを診察していたところ、突然意識を消失してしまいました。

ベッドに寝かせて脈をとったところ、全く触れません。

突如心停止の状態になったのです。

そして間もなく呼吸も止まってしまいました。

こういうとき、医者は慌てないのか。

当然ですが、慌てます。

救急救命科の医師ならともかく、しがない開業医はなかなか心肺蘇生を必要とする患者に巡り会いません。

ですが、トレーニングはしています。

なので頭よりも先に体が動いて心臓マッサージを始めました。

スタッフに指示しAEDを用意し、心電図、血圧、点滴のルート確保を行いました。

そして救急車を呼びました。

しばらく心臓マッサージをしていると、自発呼吸が。

AEDを装着すると、「電気ショックは必要ない」との判断。

そこで心電図をチェックすると、心臓が動いているという波形が!

心拍は再開したようです。ですが、波形は心筋梗塞の波形になっていました。

そして、首の血管を触れても脈の拍動が触れません。

心臓は動いていますが、心筋梗塞を起こしたために力が足りなくなっているようでした。そのため脳に向かう血管に血液を送れるだけの力がないのです。

そこで心臓マッサージを再開しながら、血圧を上げる昇圧剤の注射を行いました。

そうこうしているうちに救急車がすぐに来るだろう。。。

と思っていたのですが、今日は救急車が到着するのに10分以上を要しました。

遅い!と心のなかで叫びながら心臓マッサージをすること数分。救急車の音が聞こえてきました。

その間に昇圧剤が効いたのか血圧は上昇しはじめ、首の血管で脈が触れるようになりました。

救急車が到着し患者さんが乗る頃には自発呼吸も再開しました。

救急車に運ばれ、そのまま千葉メディカルセンターに。

診断はやはり心筋梗塞でした。

そこで患者さんは私から千葉メディカルセンターの循環器センターの手に渡りました。

以後の善処をお願いし帰院しました。

自分としては数年ぶりの救急対応でしたが、できる限りのことはできたと思います。

患者さんの命をつなぎ止め、専門医に受け渡すことができました。

適切に対応できなければ救命できなかったと思います。

しかし、心臓マッサージだけで脳への血液がどれだけ送れたのか。脳へのダメージが心配です。

救急車が到着するまでの10分は永遠のように長く感じました。

現在救急車の現場への到着時間はどんどん遅くなっており、最新の統計では平均8.6分です。

一方心肺停止患者の救命処置は最初の4分間が大切で、その間の処置が生命や予後を左右します。

救急隊が到着するころには、処置をしなければ最悪命を落としてしまう可能性もあるのです。

救急隊が必要な現場に速やかに到着できるような改革が必要なのではないかと感じました。

今日はその患者さんの回復を祈りつつ、日本の医療の現状を愁いて寝ようと思います。